オーディオで大切なことは全てNuforceが教えてくれた(オモロダイブ式アンプ考)




もしくはオーディオで大切なことは全てNuforce(現在はNuPrimeという別ブランドに変更)とタイムドメインとうどん屋のおやじ(ENSOUND)が教えてくれた。

アンプで音が変わらないなんて言い切るオーディオマニアの方も多い。だけど、これは僕の体験とは違っている。

特に僕の場合は、オーディオという銅線がウン万円という怪しさを含む業界に対して警戒しながら、オーディオ雑誌はまったく読まず、インターネットの情報を駆使して、中華アンプなどを試している中、オーディオ好きの後輩のお勧めに従って、アメリカのNuforceという会社のIcon Diaという当時300ドルくらいのアンプを導入したという流れなので、この流れが、アンプというもの違いによる変化を特に感じやすいものだったのかもしれない。

では、Nuforceのアンプはいったい何が違っていたのか。

それは、聴感上の「スピード」が明らかに速いという点だ。

よく価格コムや個人のブログのレビューを見ていると「このアンプはハイスピード」なんて記述を見かけるが、実際に聴いてみると「何を持ってハイスピードと書いているのか」正直、僕にはわからない事も多い。オーディオの世界は、ケーブルによる変化などのごくわずかな変化を大げさに扱う感性でハイスピードと言っているのだろうか。

しかし、Nuforceのアンプは明らかにこれとは全然違う。

普通のアンプと聴き比べた際に、少なくとも僕の場合、「曲の長さは変わらないのに少し早送りに聴こえる」という体験をした。そして、音の分解能が高く、通常のアンプでは団子になってしまうような速い部分もきっちり分解して聴こえる、そんな風にも感じた。
※当然、元々が過渡応答の良いアンプを使っていれば、こういった変化については気づきにくいかもしれない。また、小口径のスピーカーユニットの場合、そもそもがその軽さゆえ駆動しやすく、ハイスピードであるため、その変化は小さく感じるかもしれない。

これには後日談もあって、始めに購入したNuforceのIcon Diaというものは割と小さいアンプなので、自分の感覚が何か間違っているのか確かめたく思い、お勧めした張本人に逆にアンプをレンタルしたところ、視聴した数日後にはその彼もNuforceのアンプをゲットしていたという(笑)。



「音が速い」というのはいったいどういうことなのか?


この「音が速い」という点をどう評価するかであるが、当然ゆったりした音楽には「合っていない」可能性がある。ただし、それでは「遅い」をどう評価するかであるが、これはマイクや録音機器の録音時に「速く録音される」という事が無い以上、スピーカーから出てくる「波形が遅れている」事を示しており、それはつまり「録音より遅いスピードで耳に届いている」事を示していると言える。
※波形を保ったまま全てが遅れるのであれば、聴感上も遅れないはずなので、単純な遅れより、時間軸における歪みだと思っている。

つまり、「合っていない」と思われるゆったりした音楽も、特にそれが生演奏を録音した物である場合は、通常のアンプでは「生演奏より遅れている」可能性があり、JAZZの活気のあるライブなどでは、そのライブ感やエネルギーが損なわれている可能性がある。その一方で加藤登紀子のライブにはスピード感はいらないかもしれない。この点では立ち上がりの遅さもメリットになり得る。

そういった意味で、全てにおいて、こういう「速いアンプ」が優れているわけではないとは思うけれど、この速さ、後にこれは「過渡応答特性に優れる」という特性であると知ったが、「録音に忠実である」点で、このファクターを僕はとても重視している。合わないと思うのであれば、これまでの自分の音楽体験が既に「音が遅れる世界」での出来事だったのだと思うことにしている。

そう、つまり「ハイスピードである」のではなくて、「音が遅れていない」というのが表現として正しいのである。

※それでも、こういう類のアンプに、スピーカー側もタイムドメイン理論というスピーカー側の過渡応答特性改善策を講じた自作のスピーカーを組み合わせているので、やっぱり「速すぎる!」なんて思うことが多々あるのだが(笑)


ハイスピードを実現するためのその秘密とは!?


さて、このNuforceのアンプであるが、「何故速いのか」というところが既に2年以上所有しているにも関わらず、これまで、まったく理解できなかった。

その探求の中で、NFJというアンプキットを販売している会社のアンプ基盤をくみ上げて試したり、中華やその他の電子部品を販売している会社のアンプキットを購入したりしながら、その回路図やアンプICのデータシート等でその謎を探っていたのだが、それはそれで音は良く、音の遅れがフィルタ回路やコンデンサの周波数特性にも影響を受ける事は理解しつつ、結局、それでは説明できない程のNuforceのアンプの過渡応答特性の良さがどこから来ているのか、まったく理解できない日々を過ごしていた。

まったく、ここ数ヶ月で何度「過渡応答特性 アンプ」なんてキーワードでGoogle検索をしたものか(笑)

そして、色々な方向性からの調査の結果、最近になってやっとその正体をおぼろげながらつかんだ。そのきっかけこそがここで紹介しようとしている電流帰還アンプの存在である。

電流帰還型という一つの答え


※永遠の素人でもあるので、以下の情報は何か間違っているかもしれない。くれぐれも取り扱いには注意いただきたい。ただし、「出力をフィードバックする」という事の意味合いが過渡応答特性の改善に寄与する事は間違いがないだろう。

この方式のアンプは特に2015年付近の最新トレンドというわけではなく、もう10年以上前に考案され、「電流帰還アンプだ」との明言自体はしたりしなかったりではあるが、そのエッセンスが一部のアンプで取り込まれている事が製品ページなどから見て取れる。

別名、定電流アンプ、定電力アンプとも呼ばれる、電流帰還アンプであるが、その基本的な考え方はスピーカーユニットの駆動について、一般的なアンプでは「定電圧」で駆動する事を前提としているのに対し、電流帰還アンプでは「定電流、もしくは定電力」で駆動するよう、回路が設計されている。

詳細は、優れた回路設計者達がインターネットで十分に情報を公開しているので、そちらに任せることとして、ここでは少しだけその仕組みに触れておくこととしよう。なお、話を簡単にするため、「定電流」アンプの仕組みに絞って話をしたい。

最も簡単な電気回路の公式で「E=RI」というのがあるが、定電圧、つまり電圧Eが一定の状態では、抵抗Rの変動により、電流Iが変化してしまう。スピーカーユニットは再生周波数に応じて、その抵抗Rが変化し、一般的には低域と高域でその抵抗値が大きくなり、その結果として、低域と高域での電流量Iが小さくなってしまう。

その結果、スピーカーユニットを駆動させるのは、電圧ではなく、電流であるため、低域と高域でパワーが足りない=低域と高域が出ないという結果を生むことになる。定電流アンプでは、当然こういった問題は発生せず、必要な周波数帯で必要なだけ(供給可能な分だけ)、電流が供給されるので、スピーカーの駆動力が高域と低域でも保たれる。

その結果として、「動かすときは動かす、止めるときは止める」といった駆動の部分が改善され、結果として過渡応答特性に優れるといった特性が得られ、音楽の再生はキビキビとして、高域や低域の不足も改善できることになる。

上記の通り、良いことずくめのように思えるが、この方式には欠点もそれなりにある。この方式が主流にならない理由もそのあたりにあるのであろう。その欠点とは主には次のようなものだ。

1.スピーカーユニットのインピーダンスカーブ

愛用のTangBand W3-1364SAのインピーダンスカーブ。青い線が周波数に対する抵抗値の変化を示す。

一般的にスピーカーユニットは「定電圧」で駆動する事を前提に設計されている。そのため、インピーダンスカーブの形状によって(高域と中域、低域での抵抗値変化が大きい場合)は、その再生される音の周波数特性がフラットからかけはなれた、いわゆるドンシャリになるという可能性がある。また、定電圧前提のため、定電流で駆動すると不用意な電圧がかかることでユニットが故障する可能性もあるかもしれない。

いずれにせよ、スピーカーユニットによって、インピーダンスカーブは異なるため、「全てに最適なアンプ設計」は困難を極めることが予想される。

2.回路にスピーカー自体が含まれてしまう

上記の通り、「電流量を一定にするためには、インピーダンスカーブの特性をインプットにフィードバックする必要がある」ため、回路設計自体に、スピーカーユニットを流れる電流量を帰還させる必要がある。

これは、回路自体がスピーカーユニットが含まれている事を前提とした設計となるため、スピーカーユニットを接続しない場合、最悪、アンプが故障する可能性がある。

また、過電流や発振への対処など、回路の設計にも注意が必要となる。


Nuforce製のアンプが電流帰還(出力フィードバック型)だと思う理由


長らく、「電流帰還アンプ」なんて言葉も存在も知らなかったわけではあるが、過去から、そのヒントとなるようなフレーズは多く見かけていた。例えば、Nuforce Icon2というアンプでは「スピーカーの特性をフィードバックする」ような記述があったり、Icon AMPというアンプでは、「スピーカーを接続しないでスイッチを入れないでください」なんて注意書きがシールで貼ってあったりした。

それにも関わらず、それこそが過渡応答を改善する仕組みにつながる情報であるとは全く気づかなかった。

最近、やっと電流帰還アンプという仕組みとその特性について知った事で全ての点がつながったという事だ。

そして、Nuforceの少し前のフラッグシップアンプであるSTA-9の注意事項のページを見てみると、「出力をフィードバックする」仕組みである記述が明記してあったりもする。(笑)



しかし、これを見たところで「電流帰還アンプが何か」を知らないと理解できないわけで、久々に物事を理解することの難しさ(と面白さ)を感じている。

まあ、達成感はある(笑)


ぼくのかんがえたさいきょうのアンプ


さて、”単純な”電流帰還アンプには次のような課題があった。

1.スピーカーのインピーダンスカーブがまちまちなため、万能なアンプ設計が難しい。
2.回路にスピーカーが接続されている事が前提となっている。

また、一般的な電圧アンプでは、そもそもがスピーカーを駆動するのが電流なのに、スピーカーの特性を無視して電圧だけを制御するという点で、欠点があり、これは特に過渡応答特性という点では、その他の手法では改善も難しいように思える。

この電流帰還によりスピーカーの特性をフィードバックする方式はとても有効にも思える。実際の僕の経験もそれを物語っている。

もし、電流帰還アンプの持つ欠点を克服することができるのであれば、その方式こそが最適解であろう。少なくとも、響きなどの色づけ要素や、ケーブルやコネクタの吟味の前に、「波形を遅れなく正しく再生する」事を重視するほうが、とても大事なように思える。

スピーカー段における出力をスピーカーユニットの特性に合わせて、最適化するアンプこそが、望まれ、そして、「正しい音を再生しうる方式」なのだと僕は思う。

そして、これを実現しうるという意味で、まだ不完全かもしれないが、電流帰還アンプはとても面白いと思う。

過渡応答特性に配慮したアンプたち


「過渡応答」に言及したアンプは少ない。個人のレビューで「ハイスピードです!」なんて書いてあったりもするが、その裏づけはどこにも無く、聴いてみるとなんて事のない普通のアンプだったりもする。

例えば、最近復活したTechnicsブランドのSU-C700というアンプには「理想的なインパルス応答を実現」などと記述があり、発表以来、とても注目している。受注生産で10万円台後半なんて値段なので、まったく購入計画は無いが(笑)

http://jp.technics.com/products/c700/integratedamplifier/

上記のページの過渡応答(インパルス応答)特性に関する記述に、実に興味深い内容がある。Technicsはインパルス応答を改善するために「LAPC(Load Adaptive Phase Calibration)」という仕組みで、「テスト信号を元にスピーカーの周波数位相特性を計測し、周波数特性にフィードバックする」という事を実現しているそうだ。

一部の電流帰還アンプ回路の設計では、ゆるやかなLPF回路を組んで、高域の特性を多少落とすことによって、全体の特性をフラットにしようとする物もある。ただし、これも「個々のスピーカーによって異なるインピーダンスカーブ」に応じて回路の定数を決定する必要があり、決して万能とはいえない。
(なお、これは理論的な話であって、実際に検証をした人のブログなどでも、単純な電流帰還アンプでも、周波数特性がそこまでおかしなものになる、というわけではないことを一応言及しておく)

こういった問題を克服し、万能にするLPACという技術はとても面白く思う。



また、出力段のフィードバックを利用する方式として、他にはCSR社のDDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)という技術もあり、これを採用したデノンのPMA-60というアンプも評判となっているが、スピーカー特性に対する最適化については触れられていないので、こちらは、あくまで自身の回路の特性の最適化のみを行っているのかもしれないが、こちらも興味深い技術である。(なお、このアンプはSN比が110dBとずば抜けているので、それだけでも興味深い。)


ちなみに、Nuforceのアンプも特性はフラットであるので、何らかの工夫でこの問題を解決しているようであるが、それについては調査中である。
※これも書いてあることが理解できないだけかも、、、サイトにはこんな風に書いてある。なお、看板に偽りなし。「自己発振回路による400kHzの PWMスイッチング周波数は、入力信号および、出力電流需要、そしてスピーカーのインピーダンス変動を絶えず調整します。」


オーディオで大切なことは全てNuforceが教えてくれた


Nuforceのアンプを購入するまでは「音が遅れている」なんて発想自体が無かった。

そして、この「スピード」の観点から、スピーカー自体の過渡応答特性を改善するタイムドメイン理論という理論にも行き着き、この理論からリアルな音の再生には何よりも過渡応答特性が重要であることを学んだ。

Nuforceのアンプが奏でる透明感のある軽やかなサウンドは、昔聴いていた音楽の質を数段引き上げ、新しい魅力を見つける事となった。特に生楽器の演奏や、生声はそのリアルさを増し、ジャズやクラシック、または珍しい楽器の演奏、街頭のパフォーマーの演奏の動画など、新しい音楽にも興味を持つようになった。

この過渡応答特性というものが、全ての音楽再生で優れているわけでは無いだろう。わざとこの過渡応答特性を無視して、その他の低音やゆったりした雰囲気を重視して再生したいと思うこともあるかもしれない。それを僕は「鈍足化する」と言っている。

それもあくまで、「速さを基準とした遅さへの考慮」に過ぎない。

僕はこれからもずっと過渡応答の事を意識してオーディオの事を考えるだろう。そういった意味でNuforceのアンプは僕のオーディオの方向性を決めてしまったといえよう。

そういった意味で、早い段階にNuforceのアンプに触れ、そしてその過渡応答特性のよさの謎が解けたことは大きい。

ちなみにこの電流帰還の仕組みは、スピーカーを含めて、スピーカーケーブルの特性までを回路に含めるため、「スピーカーケーブルの違い」を実質、考慮不要としてしまう。

このオカルトの多いオーディオ世界で、なんて財布にやさしいんだろう(笑)

もう、ずっとついていきます、、、というところで、このNuforceの廉価帯のアンプがOptomaという会社に吸収されてからというものの、絶滅の危機であるという話に続くんだけど、、、(笑)

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